戦国サイダー
はあ、と溜め息をついたところで鬼虎の顔が私を見ていることに気がついた。


顔がこちらを向いているのではない。



人を殺せそうな、何でも射抜きそうな横目でこちらを見ている。



「なに……」



最後の「よ」まで出なかった、声は掠れ完全に蛇に睨まれた蛙状態。



怖い、ただそれだけ。



本人が言う通りなら、時代が時代とはいえ何人もの人を殺してきた人間なんだ。


殺気とか覇気とか、現代人にいる人とは比べ物にならないんじゃないかと思う。


その上顔の造形が綺麗過ぎるんだから、まるで絵画か彫刻のような迫力。



「何もない」



美しい肉付きの唇が低い声を発する。


顔をこちらに向けることなく、そのまま無駄に時間が流れてゆく。


 
< 142 / 495 >

この作品をシェア

pagetop