戦国サイダー
「……昔の、恋人だけど?」



私の口は、脳からの指令を待つことなく動くらしい。


思考が追いつかない、最早ヤケになっている。



自分のことだ、わかってる。



こうなったらもう、考えることなんてやめたも同然。



一瞬目を細めた鬼虎をしっかり睨み、胸元を掴んでいるその手首を左手で精一杯握る。



「だったら、何?」



イヤ。



「あのようなのが好みか」


「人の勝手じゃない」



イヤ、やめて。



「もう少し人を見る目があるかと思ったが、買い被りか」


「それで結構です、人の趣味をとやかく言われる筋合いはありません」



鼓動が速い、頭が痛い。


 
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