戦国サイダー
「儂がいつお前を――」


「そんなに私に文句言うんなら、さっさと奥さんのとこ戻ればいいじゃない!!」




ああ。



私はきっと「言ってはいけない」ことを言ったのだろう。



激情にかられ発した言葉は、鬼虎の逆鱗に触れたんだ。



今までにない、冷めた視線、蛇みたいな瞳。



「勝手に泣いていろ」



抑揚のない言葉、低くて熱のない声。



立っていることに必死だった私に一瞥をくれて、鬼虎は外へと出て行った。



「っ……」



言ってはいけなかった、それは理解出来る。


でも、今は「これでいいんだ」という気持ちしか沸き上がらない。


もういい、これで楽になれる、そう何度も言い聞かせながら、その場にへたりこんで、久しぶりに私は。



声を押し殺すことなく、精一杯、涙した。


 
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