戦国サイダー
うちのボロ屋は、今をどう思っているだろうか。


のんきな家族が住んでいる筈が、突如こんな客人が暮らすことになって。


その古い木々に、この記憶は刻まれただろうか。


そんなの、わからないけれど。





日本刀を虎が抱えて、開いた左手は私と繋いで。


雀が囀る声を聞きながら、ぬかるんだ山道を歩く。


昨夜の雷は、一時雨をもたらしたものの、今朝は打って変わって晴天。



私は、もう何も話そうと思えず。


ただその大きな手のひらをしっかり握り締め、ゆっくり歩いた。





もう二度と、一緒に歩くことのないであろう道を。


 
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