ドラゴン・テイル【外伝】

 周りの動きがスローモーションのように見えた。

 前にもこんな感覚を体験したような気がする。あれは、いつだったかな。

 目の前に迫る鋭い牙。

 ─もうダメだ…。

 意外と冷静な自分の心境に驚きつつも、ウルは覚悟した。

 だが、牙がウルの体を貫く直前、レッドドラゴンの視界から外れたヴァルザックが尻尾でレッドドラゴンを叩き落とした。

 ヅドグンッッ

 鈍い音と同時に、ウルを捕らえ損なった牙が勢いよく森の中へ落下していく。

 ─……え?

 事態が理解できずに思考が停止する。

 そんなウルを空中でキャッチしたヴァルザックが、全速力で風を切りながら逃げるようにその場を後にした。

 激しい風の抵抗がウルの体を襲う。

 まるで体を引き千切られるような錯覚すら覚えるほどの。

 息をすることすら困難で、意識を失いそうになった。

 ─これが…ッ! ドラゴンの…最速ッ!

 ただ堅く目をつぶり、その衝撃に耐えるウル。

 ヴァルザックは後ろからレッドドラゴンが追ってこないことを確認してから、少しずつ速度を落とした。

 これ以上、この速度で飛行したらウルの体がもたない。

 腕に抱えたウルはぐったりとしている。
 どこかに降りて休ませなければ……。

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