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山口先生の話を信じるとすると、今まで僕が世界は無かった、ということになる。

山崎も、その他の人々も、みんないなかったということになる。

むしろ僕自身がいなかったのだ。

信じられるか。

さっき見た夕焼けはなんだったのだ?

貴方の脳にそう記憶されているだけなのです。

畜生。

アラを探してみよう。
女の話の。

まず、『近藤拓郎』が僕を作った理由(推測)は分かったが、その元となる彼が失踪した理由が分からない。

それは女たちも分からないのか。

では仕方がないか。

ああ、そうだ。

何故僕が『近藤拓郎』になりすます必要があるのだ?

適当な場所にかくまってくれればいいではないか。

時が来るまで。

そう言えばその「時」とはいつ頃になるのだろうか。

『最善を尽す』と言っていたが、何か当てがあるのだろうか。

元々この世にいなかった存在である僕をどのようにして救済するつもりなのだろう。

近藤拓郎に成り済まし続ける訳にもいかない。

本物の近藤拓郎が帰って来たり、彼の消息が分かったりしたらお終いだ。

となると出来ることは何処かにかくまい続ける、ということくらいだ。

僕が近藤拓郎に成り済ましている間に、女はそのための設備を整えようとしているのか?

上手く行ったとしても、それは救済と言えるのか?

それは置いておいて、かくまい続けるにしろ、この研究室にでもかくまっていてくれればいいのに。

僕がここに居続けてはならない理由があるのか、はたまた女の話がハナッから嘘だったのか。

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