コピー
ガシャン
ふと、ドアの方から音がした。
女が帰って来たのか?
それにしては早過ぎやしないか。
入って来た人間の姿を見るやいなや、僕は瞬時にケースの中に身を隠した。
簡単に見つかるだろうから、まさに無駄な抵抗というやつだが。
蓋は閉められなかった。
今から閉めるのはかえって危険だろう。
どちらにしろ見つかるというのに。
一瞬しか見えず、殆どその人の容姿は分らなかったが、山口先生ではないことだけは分った。
そうか、この研究室は山口先生だけが使っている、というわけではなかったのか。
だから、僕をここにはかくまい続けられないということか。
バレたら死。
かなり危険だ。
というかもう、死、確定ではないだろうか。
足音が近付いて来る。
手を握り締め、目を瞑る。
足音が止まった。
うっすらと目を開ける。
老人が立っていた。
老人は僕を見つめ、口を開いた。