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「で、その老人は何と言ったんだ?」
山口先生が言う。
あの後、老人は言葉を残して去って行き、僕はしばらく呆然としていた。
しかし、呆然とし続ける訳にもいかないので、様々な疑問を残しながらも、山崎や他のみんなとの「実際には無かった思い出」を振り返ったりして時を過ごしていたところ、山口先生が帰って来たのだった。
気付けばかなりお腹も減っている。
「成功するかどうかは僕の行動にかかっているから、しっかりしろ…といったような内容でしたけど…」
言葉の意味は分らなかった。
成功とは何の成功だ?
「ふむ。
その老人はどんな人だった?」
自分の鮮明ではない記憶を探る。
「大体六十くらいの男性でした。
確か、白髪だったような気がします。
眼鏡は…かけていませんでした。」
「目が細くて、睨みつけているような感じではなかったか?」
まさにそれだ。
僕が呆然としてしまったのもその圧迫感によるものもあった。
「その人が誰かは検討はついた。
ここに入れる人物で、その見掛けと言ったら一人しかいないからな。
君も直ぐに会うことになる。
今日にでも会いに行こうか?
その人が誰であるかはその時分かるさ。
その人は多分私の予想した人物で合っていると思うんだが、違っていたらその時言ってくれ。
とりあえずその人が誰であるかは分ったのだが、問題なのはその人が言った言葉だ。」
山口先生にもあの言葉は不可解だったらしい。