レインブルー

あたしはクロの体をつついた。

これ以上アキラと関わったら何聞かれるか分からない。

クロは小さく頷いて、お互いにその場を離れようとした。


「こりゃ事件の匂いがプンプンするな」


アキラの言葉にあたしとクロは足を止めた。


「こう見えて俺の親父、刑事やってんだ。なんつーのかな。遺伝っつーの?そういう匂いにはけっこう敏感なんだ、俺」


額に冷や汗が伝う。クロが慌てて言った。


「んなわけねーだろ。七瀬先生はただの体調不良で休んでるだけだよ。藤木先生もそう言ってたし。あっ、もしかしてインフルエンザじゃねえ?今の時期流行ってるみたいだってよ。な、涼子」


ひきつりながらも、あたしはなんとか笑顔を繕った。


「そうだよ。なんでもかんでも事件にしたらだめだよ。竹内刑事クン」


だけどアキラは納得いかないのかなかなか引き下がろうとしなかった。


「いやこれはただの風邪じゃねえよ。名付けて美人保健医誘拐事件。これあり得るかもよ」


ビンゴ。

なんて、言えるはずもなく。

だってそれはあたしとクロだけの秘密。

今ここで知られたら、今までのことが全て水の泡だ。


「ばかばかしい。行こ、クロ」


あたしはクロの手を引っ張って教室を後にした。
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