レインブルー
しばらくして戻ってきた黒井を哀れむような眼差しで見つめる。
俺の視線に気付いた黒井は怪訝に眉を寄せた。「今度はなんだよ」
「いや失恋って辛えよなと思って」
「失恋?」
「俺も何度も経験あるから気持ちは分かるけどさ。そう落ち込むなよ。女なんか他にもいっぱいいるじゃねえか」
ぎくり、と黒井は顔を強ばせた。
「何の話だよ」
「とぼけんなよ。お前も知ってるんだろ」
「だから何を」
俺はきょろきょろと見渡してから声をひそめていった。
「俺、昨日見たんだよ。篠田がデートしてるとこ」
黒井が押し黙る。
驚いた様子もなく、目を泳がせた。
「やっぱり知ってたんじゃねえか」
「…見たのか」
「へ」
「涼子の相手、見たのか」
「ああ。まさかあいつとデキてるとは思わなかったからびっくりしたけどな」
「アキラ。このことは」
「分かってるって。誰にも言わねえから安心しろ」
ほっと胸を撫で下ろす黒井を尻目に、俺は背もたれに体を預けた。
「それにしてもあのインテリが生徒と不倫してるって噂は聞いていたけど、まさかその相手が篠田だったとはな。あいつらチューしてたぜ、チュー」