吸血鬼の花嫁


私は地下室をゆっくり見回す。

…良かった、死体は転がっていないみたい。

中央にある柩以外、何もない部屋だ。


「おい、吸血鬼。起きろよ、客人だ」

少年は部屋の中心にある柩を開け、話し掛けている。

私はとっさに身構えた。




一瞬の沈黙。



柩の中から長い指が持ち上がると、けだるげに柩の隅を掴んだ。



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