吸血鬼の花嫁


「ごめんなさい、ユゼ」


長生きすると言ったのに、その約束は守れそうになくて。


「なんて愚かなことを…」

「お願いが、あるの」

「喋るな、傷に障る」

「聞いて、ユゼ」


我が儘は、これで最後にするから。


私は手を伸ばし、両手でユゼの頬に触れた。

冷たい感触が僅かにする。

その手に、ユゼの手が重なった。


なんだか、幸せだ。


「……わたしたちはあなたに酷いことばかりしてきたわ。

だから、こんなことをいうと勝手だとおもうかもしれないけれど。

…どうか、人を恨まないでほしいの」


それは、人のためじゃなく、ユゼのために。


「だれかを恨んで生きていくなんて、そんなの哀しすぎる。

あなたには、くもりのない、あかるいみらいを…いきてほし…」


唇が動かない。

ぱくぱくと空気ばかりが震えた。

視界は暗く、ひどく眠い。

私はいつの間にか目を閉じていた。


早く眠ってしまいたい衝動に襲われる。


「はな、よめ…」

「どうか、しあわせに…」


無意識に流れた涙が頬を伝っていった。


泣くつもりなんてないのに。

笑顔が、良かったのに。




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