吸血鬼の花嫁
私たち三人は、館の外へと出る。
外は吹雪なのに、少しも寒くなかった。
それどころか、雪のカケラ一つ私の体へ届かない。風すらも擦り抜けていった。
「んじゃ、俺は後から追っていくから」
「あぁ」
吸血鬼は少年に返事をすると、マントを翻して私を包む。
視界に夜の色が広がった。
「つかまっていろ」
「……つかむ…ってどこを?」
「どこでも構わん」
どこでも、と言われても…。
つかまれそうな場所は、吸血鬼の体ぐらいしかない。
つかまったら、吸血鬼の体に抱き着くことになってしまうわけで。
迷う私に痺れを切らしたのか、吸血鬼は屈むと私の腕を取り、自分の首に回した。
そしておもむろに、私を抱きかかえる。
「いきなり何を…!」
「世話を掛けさせるな」
抗議をしようとした瞬間、吸血鬼の体がふわりと浮いた。
私は思わず吸血鬼の首にしがみつく。
怯える私を嘲笑うかのように吸血鬼が小さく笑った。