吸血鬼の花嫁
はぁーとハーゼオンは深く安堵の息を吐き出す。
「本当は俺、真っ先に謝りたかったんだ。でも、謝るのって難しいよね。こんなに歳を取ってもまだ上手く言えないや。
正直、俺のとこは青珀がいるから保っていられるわけで。この件で、青珀に呆れられて、お前に関わると厄介事ばかりだってなって、縁を切られたらどうしようとか、ぐちゃぐちゃ考えたりしてた」
心底ほっとして、だらだら喋るハーゼオンの様子にルーが苦笑した。
「お前の眷属たちにその顔見せてやりてぇ」
「ははは、こんな情けない顔してたら泣かれそう」
情けない顔をしていると泣かれる…。
普段のハーゼオンがどんな風なのか、とても気になるところだ。
ハーゼオンは私を見て、片目をつむる。
「ありがとね、花嫁」
私は首を傾げた。
何のお礼なのか分からない。
「…私、何もしてないわ」
「そんなことないよ。…俺に、きっかけをくれた。それと嬉しいことを言ってくれたから。だから、ありがとう」
どう反応しようか迷って、ルーに視線で助けを求めた。
ルーは肩をすくめて、好きにすればいいと言いたげな顔をしている。
私はハーゼオンに視線を戻した。
「意図して言ったわけじゃないのだけど。でも、どう致しまして」
「青珀のところが嫌になったらいつでも俺のとこおい」
「それで、どうするんだこれから」
にっこりと笑ったハーゼオンの言葉を遮るように、ルーが尋ねる。
多分、このタイミングはわざとだろう。
遮られたハーゼオンが残念そうに口を尖らせた。
「とりあえず俺はこれから、紫焔にも警告をしに行くつもり。同時に向こうの動きの探ってる最中だけど……どうやら、あっちは手を組んだ吸血鬼狩りの連中を騙しているらしい」
吸血鬼狩りというのは、文字通り、吸血鬼を狩る人たちのことである。
この国にはほとんどいないらしい。
「騙しているって、何を?」
「…ユゼには、恐ろしい吸血鬼が住んでいて、それがここら…黒の領域で起こっている吸血鬼事件の元凶だって」
ハーゼオンはまた、言いづらそうに顔を歪めていた。
私は、目を見開く。
「何それ」