吸血鬼の花嫁




ハーゼオンが来た日から、数日。

ユゼとルーは、何やら話し合っているようだった。

役に立てないとはいえ、仲間外れにされ気味な私は、正直あまり面白くない。

見えない家妖精とは話せるはずもなく、一人では暇で暇でしょうがなかった。

書斎で話している二人を扉の外から見守りながら、私は肩を落とす。


「だからと言ってユゼがべらべらお喋りしてくれるとも思えないのだけど」


べらべらと喋るユゼの姿を想像したら、あまりの似合わなさに笑いが零れた。


「笑えて喋れないかも」

「何が笑えると?」


上から降ってきた声に、私は慌てて振り返る。

いつの間にかユゼたちが話を終え、扉の傍に立っていた。


「ななな、なんでもないわ」

「随分と楽しそうな様子だったが…」


部屋の外に何かあるのか確かめるように、ユゼが扉から左右を見る。

もちろん、そこには何もない。

だからと言って、ユゼがべらべら喋る姿を想像して笑っていたとも言えず、私は笑ってごまかした。


「気にしないで、ほんとにっ」

「…そうか」


私を見下ろすアイスブルーの瞳は残念そうな色を浮かべている。

楽しいことの正体を知りたかったのかもしれない。


「それより話は終わったの?」

「あぁ」


ユゼの後ろからルーがひょいと覗いた。


「つーわけで、俺はちょっと買い物に行ってくるわ。遠出はしないからニ、三日で帰ってくる」

「急な話ね。何を買ってくるの?」

「食料とかだな。花嫁はいるものあるか?」

「今のところないけど…」

「そっか。んじゃ、いってくる。留守番よろしく」


言い残すと、ルーは時間が惜しいと言わんばかりに疾風のごとく廊下を駆けて行った。あっという間に姿が見えなくなる。


「いってらっしゃい…」


後ろ姿に手を振る私の声は届かなかったかもしれない。


私は、はっとあることに気付いて、隣のユゼを見た。

ルーがいないということは、しばらくユゼと二人きりになってしまう。

以前よりましになったとはいえ、気まずい。


「どうした?」


私の視線を受けて、ユゼが小さく瞬いた。


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