【完】約束=願い事

会えたことが嬉しくておかしくなったのかと自分で苦笑しながら出るとすぐ、俺の笑みは固まった。




気付くとかなり降り始めていた雨の中、
あの日怪我を癒してくれたその場所で、痛そうに手を掴む夢瞳さん。


傷ついた右手から滴る血。




思わず傘を挿して声をかけていた。


『ねぇ大丈夫?』





なんて声ほど余裕なんてない。



見上げた彼女に、すっかり雨で濡れたタオルを渡す。


あの日くれた夢瞳さんのタオル。

いつか返そうといつも持ち歩いていた。


こんな形で返すなんて…



ただ、応急処置だけど少し冷やすと落ち着いたみたいでほっとした。




少し話をすると、俺のことをやっぱり覚えていない夢瞳さん。


若干のショックはありつつも、そんなことより彼女の傷が気になって仕方なかった。




なんで怪我したの?

あの檻の中の誰かにされたの?



敢えて口に出して聞くことが出来なかった。


それでも帰る頃、少し元気になった夢瞳さんを見て、必ずまた会うことを覚えておいてもらった。



本当は今すぐにでも連れて帰りたかった。



どうか無事で。もう傷つかないで。


それだけ思った。





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