世界の灰色の部分

波照間島は本当に田舎なかんじで、建物どうしの間隔が広く、住所のあたりまできたとき、すぐにそれらしき物件が見つかった。
一階が定食屋になっていて、二階が貸しアパートらしき白い建物。
「うん、地図の番地とも一致してる。ここだよ」
先生がそう言いながら車を停める。わたしはごくりと息を飲んだ。
定食屋さんの入り口の脇にある階段から、アパートの入り口である二階へと上がる。扉は三つあった。姉さんが記した住所には202号とあったから、真ん中だろう。
一歩一歩踏みしめ、その扉の前へ行った。顔をあげ、表札を見る。
そこには柴田でも南野でもなく、比嘉、というまったく見慣れない文字が貼りつけられといた。
「違う…」
咄嗟にその左右隣の部屋の表札も見る。しかし両方とも、やはり見慣れない名字。
一気に落ち込むわたしの肩を先生が優しく叩いた。
「しょうがないよ。手紙が来てもう何年も経つんだ。引っ越してたって無理はないよ」
「うん、そうだよね…」
「そうだ、夏実ちゃんお腹すいてない?せっかくこんなところまで来たんだ。下の定食屋さんでなんか食べようよ」
そうだ、たしかに朝家を出てから何も食べてないや。意識したら急にものすごく空腹を感じた。
「うん!」
わたしと先生は階段を降り、下の定食屋へと入っていった。
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