世界の灰色の部分
午後3時すぎというせいもあってか、店内に客はいなかった。というか店主の姿さえ見えず、戸を開ける音を聞いてか、奥から「いらっしゃーい」という声と、こちらへ歩いてくるサンダルの音が聞こえてくるだけだ。こんな小さなことでも、南の島のゆるさを感じずにはいられない。
わたしと先生は適当な席に座った。
壁に貼られているのは手書きのお品書き。ソーキそば、グルクン唐揚げ定食、ラフテー丼…どれも気になるメニューばかりだ。
そんなふうにメニューに釘付けになっていると、やがて頭に三角巾をした女の人が、お水を持ってきた。
「おまちどうさま」
細い手が伸びて、コップがテーブルの上に置かれる。わたしははっとして顔をあげた。
「姉…さん…?」
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