【企】君の手をずっと。




「行かないでよ、智也」

涙が溢れた。彼の手をギュっと掴む。


今すぐの別れってわけでもない。
まだ時間はある。

それに、一生の別れってわけでもない。

だけどね、
ずっと一緒だったから。


離れるのが怖くて、不安で。



智也が居ない毎日なんて、考えられないよ。


ねぇお願い、
分かったって言ってよ。

行かないって言ってよ。




『今この話しても喧嘩になるだけだし。俺、教室戻るわ』



きっと智也、こんなあたしに幻滅しただろう。


「うぅ。っく」

涙が止まらなくて、
あたしはただただ一人で泣いた。


涙を拭ってくれる人は、隣に居ない。


智也の温かな手が無性に恋しかった。







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