恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
だけど、ノーネクタイで開いたシャツの襟元から見えるネックレスも、指に輝く指輪も、あたしなんか一生行くこともないような銀座あたりの高級宝飾店で買ったものだと思う。
それにしても……。
それにしても、このヒト、いつの間にっ!?
いくら茶トラのこねこに気を取られていたとはいえ、全然足音なんて聞こえなかったし、近づいてくる気配もまったく感じなかった。
このヒトは忍者? それともねこ?
「お前、そのねこ飼うのか?」
謎のイケメンが訊いてくる。
「飼いたいけど無理……だって、あたし“ねこアレルギー”だから」
そう。
何を隠そうあたしはねこアレルギーなんだ。
夢の中にねこたんが出てくるくらいに、ねこたん大好き少女のあたし。
嗚呼、それなのに、それなのにっ。
抱っこはおろか、その近くに近づいただけで、ちょうど花粉症のアレルギー性鼻炎のヒトみたく、クシャミは出るは、目はじゅくじゅくするはで、そりゃあもぅタイヘンなんだ。