恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
あたし、パシリにされたり、けっこーキツイこと言われても、今まであゆみセンパイに対してマジでムカついたことってなかったんだけど、今の言い方はさすがにカチンときた。

だいいち、ヒトから“ドロボーねこ”なんて言われたのは生まれてはじめてだったし。


「あ、あたし、別にそんなつもりじゃっ……。それに映画に誘ってきたのは井川センパイのほうなんですっ……」

はじめてセンパイに言い返した……思わず言い返してしまっていた。


「ソレってさ、ありえなくないぃ? だってさぁ、ヒトのカレシに誘われたらフツー断るっしょ?」

「…っ!?」



あたしは誰かに何かを頼まれるとゼッタイ「イヤ」って言えないニンゲンなんだ。



「ねっ、そうでしょ?」

そう言って、センパイがあたしの肩をドンと強く押す。

押されてヨロヨロと後ずさるあたし。


「………」

< 54 / 205 >

この作品をシェア

pagetop