恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
あたしだって、あのとき、もちろん“あゆみセンパイと付き合ってるはずの井川センパイがなんで?”って思ったよ。

だけど、頼まれると「イヤ」って言えないんだ。


「黙ってないで、なんとか言いなさいよっ」

そう言って、またあたしの肩を強く押すセンパイ。

さらにヨロヨロと後ずさるあたし。


「………」

だから、あたしは頼まれると「イヤ」って言えないんだって。

それに、ずっと好きだったセンパイに頼まれたんだから「イヤ」なんて、死んでも言えるわけないじゃん。


「ねぇっ。ねぇっ、ったらっ」

さらに肩を押し続けるセンパイ。

だけど2、3歩後ずさったところで、もう下がれないことにあたしは気づいた。

ゼンパイに押されるまま、後ろも見ないで後ずさってたけど、かかとがゴツンと何か硬いものに当たったからだ。

ふと視線を下に向ける。いつのまにか、コンクリートでできた噴水の淵のところまでバックしていたみたい。
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