恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
「ねぇっ!!」
ありったけという感じのチカラを込めて、あたしの肩をドーンと力強く押すセンパイ。
「せ、センパイ、やめてっ……」
だけど、言い終わるか終わらないうちに、あたしは背中から噴水の中に落ちていた。
ザッパーーーンッ!!!
受け身もとれずに落ちたせいで、鼻にも耳の穴にもまともに水が入ってくる。
「がふっ…」
おまけに大量の水を飲んでしまった。この噴水の水がどれぐらいキタナイ水なのかなんて想像したくもないけど、多少なりとも衛生的なものであることを今は祈るしかない。
噴水だから溺れるようなことはない。お尻をつけて座っても、じゅうぶんおヘソから上が水の上に出るくらいの深さだ。
だけど、朝シャンしてバッチリセットしたヘアーメイクが台無しで、前髪はペッタリとおでこに貼りつき、買ったまま今まで一度も着ることもなく“おろしたて”だった花柄ワンピも、そして下着の中までズブ濡れだった。
あたしと一緒に噴水に落ちることになったケータイは、とっくに溺死してると思う。