恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
「いい? アンタ、わんこの分際で井川くんとデートなんて100万年早い、ってーのっ。そのカッコじゃ、どーせもうデートなんかできゃしないんだし、顔を洗って出直してきなよ。ハハッ♪」

それだけ言うと、ダメージミニスカからスラリと伸びた長い足を右、左とリズミカルに動かして、軽快な足取りであたしの前から去っていってしまうあゆみセンパイ。


ひとり噴水の中に取り残されたあたしは、本当はショックでしばらくは呆然としてしまいそうな心理状態だった。

だけど、誰ひとり助けようともせず、あたしに好奇のまなざしを向けるギャラリーたちから逃れるため、あたしは立ち上がり、そして体じゅうのありとあらゆるところからビチャビチャと水滴をしたたらせながら、逃げるように噴水を後にした――――



      ×      ×      ×



とりあえずは公園の女子トイレに駆け込むと、着ているものを全部脱いで、ぞうきんを絞るようにして絞っていった。

ケータイが溺死して時計も見れないから、絞りはじめてどれくらい時間が経ったか分からないけど、キモチ的にはかなりの時間が経った後、ようやく身につけていた全部のものから一滴の水滴も落ちないくらいに絞り上げることができた。

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