蜜愛
部屋のドアを開けると。

……兄さんは靴のまま部屋で寝転んでいた。

ひどく酔っ払って。
お酒の臭いが部屋に充満して。


テレビを観ながら。

テレビには。


――女の、裸。



『あっ……ち、ちょっと、ご、ごめんなさい!!』

私は慌ててドアを閉めようとしたけど。

『く、靴はいたままうちにあがっちゃったの?お、欧米……?!か、なんちゃってあの』

と、笑ってドアを閉めようとしたけど。


ーー遅かった。

私は、とっさに立ち上がった兄に、腕を引かれて部屋に足がもつれるようにして転がりこんだ。

< 339 / 421 >

この作品をシェア

pagetop