蜜愛
私はそれをちらっと見て

『ね、お兄ちゃん落ち着いて、ね?』

と媚びるように言ってみたけど

『お兄ちゃん、ジャネェヨ、俺オマエノニイチャンにナンテなってネェし…黙れよ、ウルセェなぁ』

と、私の頬を打った。

私は痛いやら訳がわからないやら、

なんだかただ、どうして今日兄さんがうちにいたんだろ?

私なんで帰ってきたの?

なんて考えているうちに、ずるずるとベッドに引っ張られて押し飛ばされた。

『いたっ……ぁ』


ーーま、確かに。血は繋がってないし、いっか。


もうどうやっても逃げられなさそうなこの状況に観念してしまいそうになる自分と、


涙を流しながらひたすら兄さんの手を押しのける自分と、


そういや母さんは今どこに?早く帰ってきて!!と祈る自分。

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