アルタイル*キミと見上げた空【完】

なんでだろう。


今までなんとなく2人の間でさけてたライン。


それを口にすることで、「彼」は完全に過去の思い出になったような感覚がして、ほんの少し寂しかった。


そんな気持ちを紛らわすように何度も何度も口づけを重ねる。


「過去の私はもう今の私じゃない」


さっきの私の言葉を、自分自身に言い聞かすように、深く深く修ちゃんを求めた。




修ちゃんとのセックスは初めてではない。


数年前、バスケのことで一度ひどく自暴自棄になった修ちゃんと体を初めて合わせた。



「ごめんな・・・・」


切なげにその時修ちゃんが言った言葉を、私は心の中で修ちゃんに繰り返してた。


正直・・・・凱のことを思い出さなかったわけじゃなかったから。


普段の生活で忘れようとしてても、やっぱりこういう刹那に彼の腕や耳元を甘く震わす声を思い出してしまったのは・・・事実だったから。


私の方こそ、ごめんなさい、という気持ちとともに、


なんとなくお互いにキスまで、というような暗黙の了解みたいなものが出来てた。




あの最後の夜のことをどうしても思い出してしまうのが怖くて。


涙と汗で塩辛い、あの苦いキスの味を思い出してしまうのが怖くて。



けれど・・・・



私は息をついて隣で眠ってる修ちゃんの横顔を眺めた。


優しく、まるで壊れ物を扱うように私に触れる修ちゃんの感覚を、


私は大切にしようと、思った。


近くにいると決めたから。


もう・・・・「彼」は過去のものなんだ・・・・。








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