アルタイル*キミと見上げた空【完】
と、その時、枕元でブーブー、という振動音が聞こえて、手を伸ばすと、それは凱の携帯だった。
「凱、電話…」
と言いかけて、目に見えたディスプレイに息がとまりそうになる。
着信:saki
サキちゃんだ…。
「ん?何?」
顔をのぞかせた凱に何も言わずに携帯を渡すと、凱はちらっとそれを見てからそれを耳にあてた。
「あ、うん。何も……。うん…わかってる……わかったって!……じゃあな」
素っ気ない言葉の向こうから、サキちゃんの声が少し漏れて聞こえてくる。
何を言ってるのかはもちろんわからないけど…急に夢から現実の世界に戻ってきたような感覚。
体を起こすと、サイドテーブルに置いたままのバッグを手にリビングへと向かった。
「汐?」
「凱、今の…」
「あぁ、サキ」
何気なく言うその名前に、治ったはずの頭が急に重く感じる。