ことばのスケッチ
「やはり、お客さんによってそれぞれ応対の仕方が違いますね」
客に対して差を付けない気配りが、この仕事に携わる本来の姿であるが、彼と私を前にして無礼講の世界へと入ってくる。
「なるほど」
「同じように笑顔で接するのですが、お客さんによってはどことなくぎこちなくて」と、心の底を覗かせる。
「そのぎこちなさがある内はだめですね」と、私はさらに無礼講の世界へと引き入れる。
「まあ、手厳しいこと」と言うその女性の言葉の中には、さらに身近になったことを感じさせる。
「確かに、相手によって無礼講の範囲が違います」と、私はその女性の心を和らげた。
「何となく解るような気がします」
「ぎこちないと言うことは、まだ礼儀の世界でしょうね」
「確かにそうですね、こんなことを言っては相手に失礼じゃないかなと考えながら応対していますから」と、その女性は自分の心を分析した。
「それは、相手の心が見えないからでしょう」
「確かに、そう言われればそうですね」
「お客のほうも、距離を感じているんじゃないでしょうか」
「そのように思います」
< 111 / 177 >

この作品をシェア

pagetop