チェンジ‐ため息の行方
第2章‐犯行の動機
 小杉はこのところ自分の人生の何もかもが悪い方向へと進んでいく事に対してホトホト辟易していた。

 そしてその鬱積した思いは日を追うごとに益々加速していった。そんな男の心の隙間にふと忍び寄ったある思惑……。

 それはある意味必然?だったのだろうか?それともあるいは偶然と呼べるべきものだったのか?

 だがいずれにしてもそれは今にして思えば現在の妻と結婚するずっと以前に出会い惚れた女が小杉との貧しい暮らしに耐えかねて小杉の元を去り、今現在美貌を武器に裕福な男と結婚をして幸せに暮らしていると言う事実を偶然にも風の便りに聞いて知った事が、小杉の男としてのプライドを酷く傷つけた。

 そして次第にその事が小杉のその女に対する憎悪にも似た感情を助長させ、それは皮肉な事に日々を重ねるごとに、より小杉の神経を逆なでしていった。またそんな卑屈な思いの積み重ねが、今回の小杉の犯行を促すきっかけにもなったのである。
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