チェンジ‐ため息の行方

　まあ、父親にしてみればすでに自分の会社は長男の雄大が継いでいるのだし、尚人は次男だから好きなだけ自分で興した会社を経営してみるのも何かと今後の役に立つだろうし、また探偵社がうまく機能しなくなり失敗をした時には、自分の会社の一つを任せる選択肢を残しておいてやれば良いとそう漠然に考えて、あえて尚人に対しては日頃から遠目で静観していた。

　尚人はひとしきり花音をあやすと、萌香が出してくれた紅茶を美味しそうに一口飲んだ。

　そして
「ねえ、義姉さん僕に依頼って何？」
　と言って萌香の方へと向き直った。

「うん。尚人さん笑わないでね。あのね。花音って実は私の本当の子供ではないような気がするのよ。だからその真相を調べて欲しいの」
　とそう言われた尚人は半ばキョトンとした顔で萌香の顔を見た。

「えっ？！花音が別人？ってどうしてそんな事を思うんだい？」
　と尚人は怪訝な顔をして萌香に尋ねた。

「うん。生まれた時に確かに花音の左の薬指の間にあった３つのホクロがなくなっているのよ。ちなみに突然にホクロが消えるなんて事有り得ないし……」
　と萌香は不思議そうに言った。