“俺様”大家の王国
「だからなー! そういう事じゃなくって、……あーもう! 知るか!」
ミエロは、頭を抱えてしゃがみこんだ。
……この人は、一体何と戦ってるんだろう。
奈央が髪を拭きながらソファーに座ったら、ミエロが思い出したように言った。
「……いつ、誰に?」
捨て台詞なんて言いたくなるような事を、誰かにされたのだとしたら、
間違いなくそれは十郎だろうと、ミエロは確信していた。
一方奈央は、えぇー言うの? と顔をしかめた。
その顔でもう大体の事は分かったので、ミエロはころりと要求を下げた。
「やっぱいい」
「はあ……」
本当に、変な人だな。
奈央は、ミエロがスランプのなりすぎで、気までおかしくなってしまったのかと思い始めた。
……おや、スランプといえば。
「……さっきの曲って、新しいやつ、ですよね?」
「あ、楽譜忘れてた……ていうか……曲自体忘れたーッ!」
新しい事には、新しいらしい。
あんなに楽しそうに弾いていたのだから、きっと自信作だったのだろう。
しかし、「スランプ脱却しましたね」と言う前に、再びミエロは絶叫した。