“俺様”大家の王国



「せやっ」
 

私は、手を放した。
 

今度は、故意による落下だ。
 

すると、下にいた十郎さんが、がっしりと抱きとめてくれた。
 

線が細く、いかにも骨折しそうな彼の腕は、意外にも力強かった。


「……げほっ」
 

真正面から十郎さんにぶつかり、私は肺に感じた衝撃に咳き込んだが、彼は平気なようだった。


泣きそうな顔で私を見たかと思うと、私を抱える手にぎゅうっと、力が籠った。

余計苦しい。



「……どうしたんですか?」
 

咳が治まってから訊くと、


「どうしたもこうしたもないですよ! 


ちくしょう……」
 


そして珍しく私は、十郎さんに怒られたのだった。

< 420 / 534 >

この作品をシェア

pagetop