“俺様”大家の王国
奈央は、言葉を失ったように口をぽかんと開けて、固まっていた。
十郎が大家である事に、心底驚いた様子だった。
これまでの入居者も、大体「ええ? あんたが大家なの!」と驚いていたが、
無闇に大声を出さずに、静かに衝撃を受け、うろたえている奈央の反応が、何だかたまらなく可愛く見えた。
こういう子には、ちょっと意地悪をしたくなってくる。
十郎は、わざと矢継ぎ早に質問をした。
「学生ですか?」
「はい」
「大学生?」
「はい」
「今まで、一人暮らしの経験は?」
「ありません。ずっと自宅からの通学で……」
奈央は、明らかに戸惑っている。
もっと、困らせたくなってきた。
十郎はふむ、と少し考える様子を見せ、
「料理出来ますか?」
予め、考えていた質問を投げかけた。
「はい」