“俺様”大家の王国
 


奈央は、言葉を失ったように口をぽかんと開けて、固まっていた。

十郎が大家である事に、心底驚いた様子だった。
 
これまでの入居者も、大体「ええ? あんたが大家なの!」と驚いていたが、

無闇に大声を出さずに、静かに衝撃を受け、うろたえている奈央の反応が、何だかたまらなく可愛く見えた。
 
こういう子には、ちょっと意地悪をしたくなってくる。
 
十郎は、わざと矢継ぎ早に質問をした。


「学生ですか?」

「はい」

「大学生?」

「はい」

「今まで、一人暮らしの経験は?」

「ありません。ずっと自宅からの通学で……」
 

奈央は、明らかに戸惑っている。
 

もっと、困らせたくなってきた。

十郎はふむ、と少し考える様子を見せ、

「料理出来ますか?」
 
予め、考えていた質問を投げかけた。

「はい」

< 480 / 534 >

この作品をシェア

pagetop