“俺様”大家の王国



「おいしい?」

「ええ、多分……」
 
奈央は、媚びるように笑いもせず、首を傾げるでもなく、まっすぐに十郎を見て答えた。


本当に、自信があるからだろう。

彼女は、考えている事が意外とすぐに顔に出るタチだった。

嘘でないことは、簡単に分かった。


「それじゃ、あなたは料理担当という事で。

……これからよろしくお願いしますね、緒方さん」




 
やったー、これで毎日この子と会えるぞ!
 




十郎は、呑気に喜んだ。
 
実際、奈央の腕は確かなものだった。
 
十郎は、実家でお抱えの板前やホテルのシェフが作るようなグレードの料理を口にし、

賃貸経営を始めてから、生まれて初めておっかなびっくりインスタント食品を食べてみたという人間だった。

(しかしすぐに飽きた)


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