足を前に出すたびに、足首がきしみ、小さな石を踏んだだけで体がぐらつきそうになる。

おまけに、あの家から勝手に履いてきた草履は私の足には大きすぎて。それが災いして、親指と人差し指の間が擦れて血が滲んでいた。


痛い、と思わず呟いてしまいそうになる。


しかし言ってしまえば負けのような気がして、声に出すまいときつく唇を噛んだ。そして草履を脱ぎ捨てて、裸足で土の上を歩いた。

太陽の熱におかされた土は、火傷してしまいそうなほどに熱い。はじめの一歩では思わず声をあげ、涙が出そうになったが、歩いていくうちに、だんだんと足の裏の感覚が麻痺してくる。


じゃり、じゃり、とハタから見ればきっと亀のような速さだろうが、進む。


どれだけ鈍くとも、また、どれだけ体が痛かろうが辛かろうが、立ち止まってはいけないと、本能が言っていた。


だが――……


前から、幾人かとじゃれあいながらかけてきた子供が、私の腰のあたりにぶつかったとき。

私は、自分の頭に小さな亀裂が入ったような音を、きいた。











…そして。


子供の小さな叫び声と、周りのどよめきを聞いたあと。





世界は、真っ暗になった。




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