母の心音(こころね)
「三月十二日、末娘の結婚のことを思いながら床に入ったんや。他の三人は結婚して子供もできて、幸せや。よけいに末娘が一人ぽつんと取り残されとるように思えてな。その姿を見るたびに、愛おうしくてな。そんなことを思いながら寝たんや。そしてな、夢を見たんや。末娘が夢の中に現れたんや。道端に小さな子供が倒れておってな、何気なく抱き上げたんや、そして顔を見たら末娘や、末娘の幼い姿やった。驚いて、乳をやろうとしたんやけど、乳を飲む力もないんや。泣きもしないんや。末娘を抱きしめて悶え苦しんだんや」



何気なく
拾い上げれば我が娘
悶え泣きする声に夢覚め


< 100 / 118 >

この作品をシェア

pagetop