母の心音(こころね)
「四月三日、外は強い雨でな、一人家の中で繕い物をしとったんや。着物の破れた所をな。一人針仕事をしとるとな、母を思い出して、私の小さい頃、母もようやっとった。自分の小さい頃からの長い人生を思い出してな、急に故郷の山や川、父母の墓、実家の兄や姉のことがよみがえってきてな。無性に故郷が懐かしくなってな。時々汽車の窓から故郷の駅や、楠木を眺めたけど、ここ暫く故郷へ帰ってないんや。そう思うてな、永遠に遠ざかってゆく故郷が、やるせなく思えてな」



嫁ぎ来て
幾十年が過ぎし今
なお遠ざかる懐かしき故郷

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