母の心音(こころね)
「九月七日、万博へ行ってから、二ヶ月も経ったわ。主人は花屋で仕事をするんで、独りで山の下刈りに行ったんや。末娘も結婚したけど、次男と電話で話したことが気になってな。世間の人とうまくやれるやろか、夫婦仲良くやれるやろか、あれやこれや思いながら、独りで下刈りしたんや。カナカナ、カナカナって、日暮蝉の声を聞きながらな。あぶら蝉の声は勢いよくて真夏の太陽を感じさせるけど、日暮蝉の声は、夏の名残を告げるように、寂しい鳴き声や。独りでその声を聞くと、そりゃもう、身にしみいるように侘びしくてな。その声を聞くと、一年一年衰えて行く我が身も哀れでな」
独り聞く
日暮の声身にしみて
老い行く我を哀れにぞ思う
独り聞く
日暮の声身にしみて
老い行く我を哀れにぞ思う