母の心音(こころね)
「九月九日も、独りで下刈りに行ったんや。今日もまた、あの日暮蝉が、私を哀れにするんやろなって思いながら、山へ行ったんや。そしたらな、聞えないんや、夕暮れになっても聞えないんや。どうしたんやろ、そう思うとな、独り取り残されたようで、急に寂しくなったんや。次の日も、聞き耳を立てたんやけど、聞えないんや。何やら、身の回りがぞぞってしてな、昨日限りで死んだんやろか」



今日もまた
日暮聞くと思いしに
昨日を限りの命ともがな
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