母の心音(こころね)
「十月七日、荷車に籾を積み終わった頃、辺りは薄暗かった。主人が引いて、私は後を押して、ゆっくり、ゆっくりとから谷の坂を登ったんや。二人だけやった。土に食い込んだり、時々小石をはじく荷車の車輪の音だけがザクザク聞えるだけでな、静やった。そしてな、疲れたんで一休みしたんや。そしてな、腰を反らせて空を仰いだんや。そしたらな、山陰から半月が出ておってな、二人を覗き込むように、寂しく照らして居ったんや」



籾積んで
から谷の坂登り来れば
半月寂したそがれの道
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