母の心音(こころね)
「十月十七日、やっと脱穀が終わってな、稲はだを片付けに行ったんや。隣近所の田圃もすっかり片付いて、裸の稲はだだけが立って居った。縄を解いて杭を抜くんや。杭を抜くのは力が要るんで、男仕事や。五月に田植えをして、真夏に田の草取りをして、稲刈をして、稲はだにかけて、脱穀して、そりゃ戦争みたいやった。杭を抜いた後の田圃にはそんな跡があるんや。稲の切り株を見てそう思うんや。この跡に麦を蒔くんや。そしてな、冬がやって来るんや。杭を抜いた田圃には早や北風が吹いて、仕事を終えた夕方は寒いぐらいや。秋はどことのう寂しいものや」
稲はだを
片付けられし田圃には
北風強く秋はふけ行く
稲はだを
片付けられし田圃には
北風強く秋はふけ行く