母の心音(こころね)
「十一月二十五日やった。末娘の縁談話しで、主人の妹の家に行ったんや。松阪へな。汽車に乗るのも久しぶりや。何もかも忘れて、窓から景色を眺めとったんや。故郷の駅を過ぎた辺りやった、みかん畑が在ってな、緑の葉の中に黄色いみかんの実が見え隠れして、それはそれは花が咲いておるようで美しかった。秋の名残を惜しむように、見てくれとばかりに輝いて見えたんや」


汽車の窓
遠くに見ゆるみかん山
名残惜しむや金色の実よ
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