母の心音(こころね)
「十二月十八日で、一日中雨やった。仕事もできないし、独りコタツに入ってな、退屈を紛らわすと言うか、寂しさを紛らわすと言うか、末娘が置いていった夏目漱石の我輩は猫であるを読んで居ったんや。そこえ郵便やさんがやってきたんや、現金書留やった。何やろ現金書留なんて来る筈がないと思って差出人を見たんや。そしたら次男の嫁からや。震える手で急いで封を開けたんや。手紙も一緒に入って居った。その手紙を読みながら涙が出たんや、胸一杯になってな。家のローンもあるし、子供の育児にもかかるし、嫁は何も言わなかったけど、次男の話では夜遅くまで内職しとるんや。東京へ遊びに行っても、嫁は何も言わんのや。人には見せないけど、普段はそりゃ切り詰めた生活をしとるんやろ。そう思うと胸が一杯になるんや、涙が出るんや、何回も何回も手紙を読んだんや」
横浜の
次男の嫁が送り来た
手紙と金に胸は痛みぬ
横浜の
次男の嫁が送り来た
手紙と金に胸は痛みぬ