母の心音(こころね)
昭和四十四年(一九六九年)
「今日は大晦日や。子供等が居る頃は、徹夜で餅つきをしたものや。今年は子供等が誰も帰ってこなかった、隣近所はそれはそれは賑やかやったけどな。主人と二人きりで、ラジオの紅白歌合戦を聞いたんや。それが終わって、除夜の鐘が鳴り出してな、主人は仏壇に灯りをつけて、おつとめをはじめたし、独りで除夜の鐘を聞いたんや。ゴーンと言う余韻を残して響く鐘の音は、それはそれは寂しい響きでな。いろいろあった一年を思い起こして沈んで居ったんや。それはもう、はかり知れないほど名残惜しい気持ちでな」



除夜の鐘
一つ鳴るたび暮れて行く
過ぎ行く年に名残惜しまる



「そしてな、除夜の鐘が終わって、時計の針が一月一日を告げたんや。新しい年や。そしてな、今年こそ末娘の縁談がまとまって、良い年でありますようにと願ったんや」



今年こそ
日ごとに思う娘子の
幸せ在れと我は祈りつ

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