母の心音(こころね)
「二月三日、主人は組合の用事で出かけたんや。外は嵐のように、雪混じりの木枯らしが吹いて居った。それはそれは寒い日でな。窓に吹付ける風の音を聞きながら、独りでコタツに入って居ったんや。こんな木枯らしの中で、別れ別れの子供等はどうしとるやろってな」



ごうごうと
風吹きすさむ故郷で
別れ別れの子等を思いて


「二月五日、今日も独りや。コタツに入っとると、無性に寂しいんや。それで家の外にでたんや。隣近所の人影もないし、独りで風呂場の角に立って、みかんの木やら、芍薬やら、孫が残していったシャベルやら、ボーっとな、暫く眺めとったんや。あんなこともあった、こんなこともあったってな。これまで過ぎてきた長い年月を思い出しながら、辺りを眺めたんや。ぼんやりとな」



ただ独り
軒端に立ちて思い馳せ
世の雨風に耐えし我が身を
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