母の心音(こころね)
「また、独りぼっちになってしまった。滝の音を聞きながら、独りで畦の草刈をしたんや。自分自身を信じて、子供を育てたんや。子供等は本当の気持ちを解ってくれてないんや、どんな寂しい思いをしておるか、解ってくれないんや。そりゃ、話す機会も無いんで無理やけど。もう歳もとった。今振り返ると、それはそれは、険しい道やった」



嫁ぎ来て
幾十年のこの山河
遠き険しき人知れぬ道



「九月七日、末娘が中学校に居た頃や。誰からもろうたのか知らんけどな、畑の隅に花を植えてくれたんや。花の名前は知らんけどな。綺麗な花でな、畑の草を取っとるとな、その花が微笑みかけてくれてるようでな」



草取れば
微笑みかけて語るよな
娘が植えし名も知らぬ花
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