母の心音(こころね)
「十月二十三日、草刈や野仕事も片付いてな、久しぶりに家の中を整理したんや。すっかり忘れて居ったけど、押入れの中から古い毛布が出てきてな、次男が初めて家を出るときに、持たせてやった毛布や。そうや、京都の予備校に行ったあの時に持たせてやった毛布や。そう思ってな、深い愛着を感じたんや。次男の匂いが残っとる毛布を撫でるようにしてな。東京でも使うたんや。何か役に立てようと思って洗濯したんや。次男と一緒にあちらこちらと回った毛布を思いながら、過ぎし昔を消すように思えてな」


古い毛布
我が子と共に幾年を
都の宿で凌ぎ来しかな
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