母の心音(こころね)
昭和四十五年(一九七0年)
「一月十二日やった。組の行事があってな、隣の若い奥さん二人と三人で、松阪へ幕の内弁当を買いに行ったんや。朝の九時の汽車でな。久しぶりや。若い奥さんと世間話しをしながら、そりゃ楽しかったわ。松阪の町をあちらこちら歩いてな、普段の寂しい気持ちは何処やらへ行ったわ。そりゃもう、旅行しとる気分でな」
隣人と
誘い合わせて松阪で
捜し求めし組の幕の内
「一月十七日やった。前の日に降った雪が溶けんでな、区民の出会いで道の雪かきをすることになったんや。連絡が来たのは、主人が花屋の仕事で家を出た後やったんで、仕方なしに出たんや。女で出たのは、高野のトメさんだけやった。皆の家は男が出たんや。そりゃ賑やかやった。だけどな、周りは皆若い人ばかりで、年寄りは自分一人やった。皆労わるようにしてくれたけど、それが反って惨めでな」
老いたれど
我が家の勤め果たさんと
雪かきの手痛く冷たく
「一月十二日やった。組の行事があってな、隣の若い奥さん二人と三人で、松阪へ幕の内弁当を買いに行ったんや。朝の九時の汽車でな。久しぶりや。若い奥さんと世間話しをしながら、そりゃ楽しかったわ。松阪の町をあちらこちら歩いてな、普段の寂しい気持ちは何処やらへ行ったわ。そりゃもう、旅行しとる気分でな」
隣人と
誘い合わせて松阪で
捜し求めし組の幕の内
「一月十七日やった。前の日に降った雪が溶けんでな、区民の出会いで道の雪かきをすることになったんや。連絡が来たのは、主人が花屋の仕事で家を出た後やったんで、仕方なしに出たんや。女で出たのは、高野のトメさんだけやった。皆の家は男が出たんや。そりゃ賑やかやった。だけどな、周りは皆若い人ばかりで、年寄りは自分一人やった。皆労わるようにしてくれたけど、それが反って惨めでな」
老いたれど
我が家の勤め果たさんと
雪かきの手痛く冷たく