魔法の指先
そう言う彼女も充分スリムだ。私の場合、単に少食なだけ。彼女のように食べたいものをガツガツ食べていたら、確実に太ってる。痩せの大食いとは、まさにこのこと。

「そういえばさ、心亜。義人さんとなにか進展あった?」
『………え?』
「なんか、ないの?」

ここでいきなりガールズトーク。彼女はこの手の話が大好きだ。女の子は皆そうかもしれないが。

『なんかって……』

思い当たることといえば、昨日のあの言葉。

〈寂しくなったらさ、店に来ていいからね?〉

涙が出そうなほど嬉しかった。あの人はいつも私の欲しい言葉をくれる。そして私の心を暖めてくれる。

遠いようで近い存在の貴方は雲のよう。

側にいても心はいつも遠くのまま。私じゃない誰かを想っている。時々そんな感覚に襲われる。根拠はないけれど。

「?…心亜?」

物思いにふけっていた私はサラの声で我に返る。

『ぁ……ごめん、ボーッとしてた』
「ふーん?まぁ、いいや。心亜、2時くらいまでなら時間あるんだよね?」
『うん、余裕もって1時間前にはスタジオに行かなきゃ』
「じゃあさ、それまで買い物付き合ってよ!家具とか色々買いたいしVv」

友人との買い物なんて何ヵ月ぶりだろう。懐かしい。



私たち2人は六本木に足を運んだ。サラのお気に入りのインテリアショップがあるという。

彼女は多分、私よりも東京の街を知り尽くしてる。普通は逆なのだが。
───それもその筈。彼女が日本に来日してくる回数が他の外国人モデルよりも多い。その為、都会人並みに東京には詳しい。日本育ちの私が知らない土地の話を楽しそうに話す彼女は、はたから見たら異様なの光景だろう。

『そういえば、何で急にこっち移住する気になったの?連絡もなしに』

電車で六本木に向かう途中私は1番気になっていたことを聞いてみた。確信はないが、何か理由があるんだと思う。

「ん~?別に~?」
『………』
「そんなことよりさ、なんかこうやって2人で買い物するの久々だね」
『…そうだね』

かわされた。不自然なくらいに。まぁ、無理には聞かないでおこう。

《六本木~六本木~》


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